どんぐり倶楽部オンライン通信 【2016年10月号】
2016/10/02 (Sun) 10:09
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考える力・絶対学力を育てる
=どんぐり倶楽部オンライン通信=
どんぐり教育研究会発行 (カニ先生)
2016/10/02号
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このメルマガは、どんぐりオンラインメンバーに登録された皆さまへ配信しています。
配信不要の方は、タイトルを「配信不要」に書き換えて、そのまま返信してください。次号から配信を停止します。
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◆秋になりました。少しずつ肌寒くなってきましたね。芸術の秋、スポーツの秋、「食欲の秋」でもあります。
私は何とか食べ過ぎないように、食欲をコントロールする耳のツボをおしたりしています。皆様も体調管理には十分お気をつけください。
◆去る9月17日(土曜日)福岡国際女性シンポジウム(主催:福岡県)に参加する機会がありました。
当日は、「ウーマノミクス:明日の経済を担うのは女性」というテーマで、キャシー松井さんによる基調講演が行われ、大変興味深く拝聴させていただきました。
キャシー松井さんは、1994年にゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。
1999年には「ウーマノミクス」(ウーマン+エコノミクス)という概念を用いて、女性の労働力の拡大が日本経済に与える影響を分析したレポートを発表。
以降、一貫して「日本経済と女性の社会参加」をテーマに、企業や政府に働きかける啓蒙活動を行われています。
◆いろいろなお話を伺ったのですが、キャシー松井さんが繰り返し、「通説(俗説)ではなく、データや予測に基づいて議論をすることが大事」と強調されていたのが、非常に印象的でした。
キャシー松井さんの分析によると、
1.女性の活用と、企業の収益性や経済には関係がない
2.女性が働くと、男性の仕事を奪ってしまう
3.女性が働くと、出生率が下がる
というのは全部通説であり、“根拠がない”とのことでした。
「女性の社会参加は、人権うんぬんの問題ではない」「女性の社会参加は、日本の経済と密接に関係がある」ということが、最近では少しずつ社会全体に浸透し始めてきているそうです。
◆たとえば1番目の通説に関しては、海外のNPOが調査を行ったところ、アメリカの大企業の中で、
「女性の役員が3人以上いる企業」と「ゼロの企業」の収益率を比較してみると、女性の役員が3人以上いる企業のほうが圧倒的に収益率が高い、という結果がでているそうです。
これは「女性のほうが勤勉である」という意味ではなく、企業の意思決定過程において、「多様な視点があることが」「イノベーション(変革や刷新)を生みやすい」環境になっているという点に理由があるとのことでした。
また、2番目の通説に関しては、「女性が働くと中長期的には国のGNP(国民総生産)を押し上げる効果がある」「経済のパイが増えるので、男性の仕事を奪うことにはならない」という分析があるそうです。
さらに、3番目の通説に関しても、「北欧やオランダなど、女性が働いている国のほうが出生率は高い」というお話を伺いました。
◆上記のような話をすると、キャシー松井さんは、たびたび企業や政府の意思決定にかかわる人たちから、「でも、日本は例外ですから」「海外ではそうかもしれないけれど…」という反論を受け続けてきたそうです。
そこで、一つの事例として、「日本国内で女性が働いている割合が高い県」と「出生率が高い県」を47都道府県で比較したところ、やはり「女性が働く都道府県では出生率があがる」という結果が出たとのことでした。
◆とはいえ、今の日本の企業社会のように「成果を出すために、会社にすべてを捧げられますか?」といった滅私奉公の雰囲気が支配する社会のままでは、女性が活躍できる将来ビジョンの実現は程遠いのではないかと思います。
少子化ジャーナリストの白河桃子さんが、指摘されているように、「女性活躍とは、働く女性の夫を早く家に帰す」ことと裏表の関係にあり、男性も意識や働き方を変えることがとても大事ではないかと感じます。(毎日新聞:2016年8月27日号)
子育ての参考にされてみてください。
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【今日のもくじ】
◇〔1〕『親として知っておきたいキャリアの話(その21)』
◇〔2〕「子どもが勉強好きになる子育てとは(その19)」
◇〔3〕どんぐり問題への取り組みをサポートする『学習の手引き』(年長さん~5年生)を販売中です。
◇〔4〕編集後記
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◇〔1〕『親として知っておきたいキャリアの話(その21)』
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去る8月8日(月曜日)、福岡市内で開催された「先の見えない時代を生き抜く行動様式」(九州大学ビジネススクール教授・高田仁先生)と題する勉強会に参加する機会がありました。今回は、その続編です。
■当日は2時間という時間の中で、九州大学ビジネススクールで教えられている内容のエッセンスを分かりやすく教えていただきました。
中でも、私が興味深いと思ったのは、「アントレプレナー(起業家)に求められるものは何ですか?」という問いに対するビジネススクールでの分析が、一般的な通説(俗説)とは真逆であった、ということです。
自分自身をふりかえってみても、私たちはソフトバンクの孫正義さんや、楽天の三木谷浩史さんといった著名な企業家をイメージしますが、アントレプレナーと言われる人たちは、
「リスクをものともせず、物事をすすめていく」
「明確な将来ビジョンがある」
といった特質があるのではないか、と考えているのではないかと思います。
■しかし、実際に九州大学ビジネススクールで研究して、世界的なアントレプレナーと言われる人たちを多数分析してみると、
「徹底的に事前に調べて、“リスクをできるだけ小さくする”ことをまず考える」
「“明確なビジョンは、特にない”場合も多い。(ちょっとしたアイディアと行動があると、何かのきっかけでそれらが大きく膨らむということがよくある)」
「環境の変化をみながら、常に“細かく軌道修正していく”ことに優れている」
といった特質があることが分かったのです。
■実は、前回のメルマガにも書きましたが、「アントレプレナーシップ」が必要なのは、決して起業を考えている人だけではないのです。
これから社会に出る子どもたちの一人一人が、「人生のアントレプレナー」として、自分にあった生き方や働き方を切り拓かねばならない時代がすぐそこまで来ています。
保護者や教師の多くは、自分たちの学生生活や社会人経験から、
「子どもたちには、そこそこの学校を出て、そこそこの企業に就職し、定年まで堅く勤めてくれればいいなー」という漠然とした考えを持っているかもしれません。
しかし、それは今後通用しない古い考えだと言わざるを得ないのです。
■上越教育大学教職大学院教授の西川純先生は、その著書「親なら知っておきたい学歴の経済学」(学陽書房)の中で、次のように分析されています。
「いまは多くの保護者が、中卒より高卒。高卒より大卒。同じ大学だったら、偏差値の高い学校に進学することが将来の豊かさを保証するというモデルをもっています。しかし、今やそれは誤りなのです」
「国内の大学の地位は見る間にさがり、偏差値60の大学を出るより、実業高校を出て指定校求人で就職したほうがずっといいという現象も起きています」
「大卒の実質の就職率は6~7割で、さらに正社員として就職できない人も増えています」
■さらに西川先生は、進学のための奨学金や非正規雇用といった、現在の若者が置かれている社会の環境が、この20年ほどの間にこのうえもなく悪化している現状に触れ、ショッキングなことも書かれています。
「とことん追い詰められた人の中には、自らの命を絶つ人がいます。日本の15歳から39歳の死因のトップは自殺なのです。この傾向は日本以外のG7諸国には見られません」
「通説にまどわされず、本当にその子に適した進路を考えることは、子どもの命を守ることです」
■子どもの進路を考えるときに、
「学校の先生がこう言っているので、うちの子の偏差値からすると、このあたりかな?」
「とりあえず、医学部を目指しておけば、食べていけるのでは…」
という決め方をするのは、数十年前までは良かったかもしれませんが、今の時代には全くそぐわないということを、お子さんに関わるすべての人は、ぜひ理解しておくべきではないかと思います。
(次回に続く)
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◇〔2〕「子どもが勉強好きになる子育てとは(その19)」
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先日あるお母さまから、メールで次のようなご相談をいただきました。
「年長の子と取り組んでいます。年長のときは、答えがでなくても良いと思っており、とにかく楽しんで描けばいいと子どもにも伝えています」
「しかし、子どもは子どもながらに、正解を出したいと思っているようです」
「たとえば、この間は問題の中の、…きのうまでに9回きいています、のところが描けない、といって泣いていました」「こういう時は、親としてどう声かけをすればいいのでしょうか?」
実はこのようなご相談は、以前からとても多いのです。
■多くの親御さんとメールでのやりとりをしてきましたが、これまでの日本の学校教育(教師の説明を聞いて、それを覚えるスタイル)で育ってきた私たちは、
「正解が何かを知りたがる」
「何をするにしても失敗してはいけない、間違ったらいけないという気持ちが、強迫神経症と言ってもおかしくないレベルで強く出ることがある」
という傾向があり、それが無意識のうちに子どもにも影響を与えているのではないか?と感じることが多々あります。
子どもとの接し方にも、声かけにも、「この方法でいいのでしょうか?」「私は間違っていないでしょうか?」と気にされる方が、まじめで几帳面な親御さんにとても多いのです。
■どんぐりの取り組みはマニュアルもなく、最初はとても難しいのですが、試行錯誤しながら一定の期間取り組んでいくうちに、親子で以下のような変化があるようです。
「たった一つの正解にこだわらず、自分にとって最適な方法を考え、選べるようになる」
「答えではなく、答えにいたるプロセスに注目し、楽しめるようになる」
「ゼロか100かではなく、スモールステップで立ち止まって考えるようになる」
「親子とも、状況の変化に応じて、臨機応変に対応できるようになる」
「失敗を怖がらず、行動的に動けるようになる」
これらは言葉にすると簡単ですが、実際はそう簡単なことではありません。
その親御さんの育った家庭の雰囲気にもよるのですが、自分自身を振り返ってみても、潜在意識に染み付いた「失敗を怖がる気持ち」「正解が何かを知りたがる気持ち」には、相当根強いものがあるのです。
■そう考えると、上記のような変化を親子で楽しめるどんぐりの取り組みは、「誰もが人生のアントレプレナー」であることを求められる今の時代に有意義なものであると言えるのではないでしょうか。
たとえば、どんぐり問題に次のような問題があります。
「なんきょくで かった なわとびのなわは こおりでできていました。とぶたびに コロンと 音がして みじかくなっていきます。8かい とんだときに ちょうど はんぶんの ながさに なったので とぶのを やめました。ぜんぶで なんかいとぶと なわとびのなわは きえて なくなってしまうでしょう。」(年長35)
この問題に対して、ある親御さんが、
「“なんきょく”って何?と質問されたときに、その説明から子どもが興味を持ちそうです」
「設定がとても面白いと思います」
とコメントされていました。
このように、「正解が出なければ意味がない」と考えるのではなく、お子さんがどんなことに興味・関心をもつだろう?と、親御さんがワクワクしながら、親子の対話を通して「うちの子の、その年齢でしかありえないユニークなアイディアや発想を楽しむ」ことを強くおすすめしたいと思います。
(次回に続く)
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◇〔3〕どんぐり問題への取り組みをサポートする『学習の手引き』(年長さん~5年生)を販売中です。
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◇〔4〕編集後記
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最近、「ベーシックインカム」が日本でも真剣に議論されはじめているという雑誌の記事を読み、大変良いことだと思いました。
ベーシックインカムとは、全国民に無条件に最低限度の生活費を支給する制度です。例えば月に5万円程度であれば、今すぐにでも実現可能な数字だそうです。(一家4人だと20万円)逆に社会保障(年金・雇用保険・生活保護など)は徐々になくなります。
すぐに制度を移行するのは難しいのですが、「ベーシックインカム」的な方法を、少しずつ導入していくことはできるのです。(例えば、小中学校の給食を無料にするとか)
国民全体が失業時にも不安なく生活できるようになれば、今よりも「失敗を恐れずチャレンジ」する人が増えるのではないでしょうか。また、利益を生むことがなかなか難しい職業(伝統芸能の伝承者など)にも就業希望者が集まるかも知れません。
「所得の再分配」という視点から、真剣に議論してほしいと思います。
年末に向けていろいろと気になることが増えてきました。
今、一番気になっていることは「貧血」です。先日血液検査で、お医者さんから鉄分が足りないことの指摘を受け、それでいろいろと体調不良がおこっていたのか…と納得しました。
これからはレバーも嫌がらずに食べようと思います。
※次号は11月1日(火)に配信予定です。
≪発行/編集≫━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
どんぐり教育研究会
URL: http://donguriclub.jp/?mailmag=20161002
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○当メールマガジンへのご意見・ご感想、お待ちいたしております。
○お問い合わせは info@donguriclub.com まで。
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どんぐり教育研究会発行 (カニ先生)
2016/10/02号
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◆秋になりました。少しずつ肌寒くなってきましたね。芸術の秋、スポーツの秋、「食欲の秋」でもあります。
私は何とか食べ過ぎないように、食欲をコントロールする耳のツボをおしたりしています。皆様も体調管理には十分お気をつけください。
◆去る9月17日(土曜日)福岡国際女性シンポジウム(主催:福岡県)に参加する機会がありました。
当日は、「ウーマノミクス:明日の経済を担うのは女性」というテーマで、キャシー松井さんによる基調講演が行われ、大変興味深く拝聴させていただきました。
キャシー松井さんは、1994年にゴールドマン・サックス証券株式会社に入社。
1999年には「ウーマノミクス」(ウーマン+エコノミクス)という概念を用いて、女性の労働力の拡大が日本経済に与える影響を分析したレポートを発表。
以降、一貫して「日本経済と女性の社会参加」をテーマに、企業や政府に働きかける啓蒙活動を行われています。
◆いろいろなお話を伺ったのですが、キャシー松井さんが繰り返し、「通説(俗説)ではなく、データや予測に基づいて議論をすることが大事」と強調されていたのが、非常に印象的でした。
キャシー松井さんの分析によると、
1.女性の活用と、企業の収益性や経済には関係がない
2.女性が働くと、男性の仕事を奪ってしまう
3.女性が働くと、出生率が下がる
というのは全部通説であり、“根拠がない”とのことでした。
「女性の社会参加は、人権うんぬんの問題ではない」「女性の社会参加は、日本の経済と密接に関係がある」ということが、最近では少しずつ社会全体に浸透し始めてきているそうです。
◆たとえば1番目の通説に関しては、海外のNPOが調査を行ったところ、アメリカの大企業の中で、
「女性の役員が3人以上いる企業」と「ゼロの企業」の収益率を比較してみると、女性の役員が3人以上いる企業のほうが圧倒的に収益率が高い、という結果がでているそうです。
これは「女性のほうが勤勉である」という意味ではなく、企業の意思決定過程において、「多様な視点があることが」「イノベーション(変革や刷新)を生みやすい」環境になっているという点に理由があるとのことでした。
また、2番目の通説に関しては、「女性が働くと中長期的には国のGNP(国民総生産)を押し上げる効果がある」「経済のパイが増えるので、男性の仕事を奪うことにはならない」という分析があるそうです。
さらに、3番目の通説に関しても、「北欧やオランダなど、女性が働いている国のほうが出生率は高い」というお話を伺いました。
◆上記のような話をすると、キャシー松井さんは、たびたび企業や政府の意思決定にかかわる人たちから、「でも、日本は例外ですから」「海外ではそうかもしれないけれど…」という反論を受け続けてきたそうです。
そこで、一つの事例として、「日本国内で女性が働いている割合が高い県」と「出生率が高い県」を47都道府県で比較したところ、やはり「女性が働く都道府県では出生率があがる」という結果が出たとのことでした。
◆とはいえ、今の日本の企業社会のように「成果を出すために、会社にすべてを捧げられますか?」といった滅私奉公の雰囲気が支配する社会のままでは、女性が活躍できる将来ビジョンの実現は程遠いのではないかと思います。
少子化ジャーナリストの白河桃子さんが、指摘されているように、「女性活躍とは、働く女性の夫を早く家に帰す」ことと裏表の関係にあり、男性も意識や働き方を変えることがとても大事ではないかと感じます。(毎日新聞:2016年8月27日号)
子育ての参考にされてみてください。
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【今日のもくじ】
◇〔1〕『親として知っておきたいキャリアの話(その21)』
◇〔2〕「子どもが勉強好きになる子育てとは(その19)」
◇〔3〕どんぐり問題への取り組みをサポートする『学習の手引き』(年長さん~5年生)を販売中です。
◇〔4〕編集後記
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◇〔1〕『親として知っておきたいキャリアの話(その21)』
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去る8月8日(月曜日)、福岡市内で開催された「先の見えない時代を生き抜く行動様式」(九州大学ビジネススクール教授・高田仁先生)と題する勉強会に参加する機会がありました。今回は、その続編です。
■当日は2時間という時間の中で、九州大学ビジネススクールで教えられている内容のエッセンスを分かりやすく教えていただきました。
中でも、私が興味深いと思ったのは、「アントレプレナー(起業家)に求められるものは何ですか?」という問いに対するビジネススクールでの分析が、一般的な通説(俗説)とは真逆であった、ということです。
自分自身をふりかえってみても、私たちはソフトバンクの孫正義さんや、楽天の三木谷浩史さんといった著名な企業家をイメージしますが、アントレプレナーと言われる人たちは、
「リスクをものともせず、物事をすすめていく」
「明確な将来ビジョンがある」
といった特質があるのではないか、と考えているのではないかと思います。
■しかし、実際に九州大学ビジネススクールで研究して、世界的なアントレプレナーと言われる人たちを多数分析してみると、
「徹底的に事前に調べて、“リスクをできるだけ小さくする”ことをまず考える」
「“明確なビジョンは、特にない”場合も多い。(ちょっとしたアイディアと行動があると、何かのきっかけでそれらが大きく膨らむということがよくある)」
「環境の変化をみながら、常に“細かく軌道修正していく”ことに優れている」
といった特質があることが分かったのです。
■実は、前回のメルマガにも書きましたが、「アントレプレナーシップ」が必要なのは、決して起業を考えている人だけではないのです。
これから社会に出る子どもたちの一人一人が、「人生のアントレプレナー」として、自分にあった生き方や働き方を切り拓かねばならない時代がすぐそこまで来ています。
保護者や教師の多くは、自分たちの学生生活や社会人経験から、
「子どもたちには、そこそこの学校を出て、そこそこの企業に就職し、定年まで堅く勤めてくれればいいなー」という漠然とした考えを持っているかもしれません。
しかし、それは今後通用しない古い考えだと言わざるを得ないのです。
■上越教育大学教職大学院教授の西川純先生は、その著書「親なら知っておきたい学歴の経済学」(学陽書房)の中で、次のように分析されています。
「いまは多くの保護者が、中卒より高卒。高卒より大卒。同じ大学だったら、偏差値の高い学校に進学することが将来の豊かさを保証するというモデルをもっています。しかし、今やそれは誤りなのです」
「国内の大学の地位は見る間にさがり、偏差値60の大学を出るより、実業高校を出て指定校求人で就職したほうがずっといいという現象も起きています」
「大卒の実質の就職率は6~7割で、さらに正社員として就職できない人も増えています」
■さらに西川先生は、進学のための奨学金や非正規雇用といった、現在の若者が置かれている社会の環境が、この20年ほどの間にこのうえもなく悪化している現状に触れ、ショッキングなことも書かれています。
「とことん追い詰められた人の中には、自らの命を絶つ人がいます。日本の15歳から39歳の死因のトップは自殺なのです。この傾向は日本以外のG7諸国には見られません」
「通説にまどわされず、本当にその子に適した進路を考えることは、子どもの命を守ることです」
■子どもの進路を考えるときに、
「学校の先生がこう言っているので、うちの子の偏差値からすると、このあたりかな?」
「とりあえず、医学部を目指しておけば、食べていけるのでは…」
という決め方をするのは、数十年前までは良かったかもしれませんが、今の時代には全くそぐわないということを、お子さんに関わるすべての人は、ぜひ理解しておくべきではないかと思います。
(次回に続く)
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◇〔2〕「子どもが勉強好きになる子育てとは(その19)」
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先日あるお母さまから、メールで次のようなご相談をいただきました。
「年長の子と取り組んでいます。年長のときは、答えがでなくても良いと思っており、とにかく楽しんで描けばいいと子どもにも伝えています」
「しかし、子どもは子どもながらに、正解を出したいと思っているようです」
「たとえば、この間は問題の中の、…きのうまでに9回きいています、のところが描けない、といって泣いていました」「こういう時は、親としてどう声かけをすればいいのでしょうか?」
実はこのようなご相談は、以前からとても多いのです。
■多くの親御さんとメールでのやりとりをしてきましたが、これまでの日本の学校教育(教師の説明を聞いて、それを覚えるスタイル)で育ってきた私たちは、
「正解が何かを知りたがる」
「何をするにしても失敗してはいけない、間違ったらいけないという気持ちが、強迫神経症と言ってもおかしくないレベルで強く出ることがある」
という傾向があり、それが無意識のうちに子どもにも影響を与えているのではないか?と感じることが多々あります。
子どもとの接し方にも、声かけにも、「この方法でいいのでしょうか?」「私は間違っていないでしょうか?」と気にされる方が、まじめで几帳面な親御さんにとても多いのです。
■どんぐりの取り組みはマニュアルもなく、最初はとても難しいのですが、試行錯誤しながら一定の期間取り組んでいくうちに、親子で以下のような変化があるようです。
「たった一つの正解にこだわらず、自分にとって最適な方法を考え、選べるようになる」
「答えではなく、答えにいたるプロセスに注目し、楽しめるようになる」
「ゼロか100かではなく、スモールステップで立ち止まって考えるようになる」
「親子とも、状況の変化に応じて、臨機応変に対応できるようになる」
「失敗を怖がらず、行動的に動けるようになる」
これらは言葉にすると簡単ですが、実際はそう簡単なことではありません。
その親御さんの育った家庭の雰囲気にもよるのですが、自分自身を振り返ってみても、潜在意識に染み付いた「失敗を怖がる気持ち」「正解が何かを知りたがる気持ち」には、相当根強いものがあるのです。
■そう考えると、上記のような変化を親子で楽しめるどんぐりの取り組みは、「誰もが人生のアントレプレナー」であることを求められる今の時代に有意義なものであると言えるのではないでしょうか。
たとえば、どんぐり問題に次のような問題があります。
「なんきょくで かった なわとびのなわは こおりでできていました。とぶたびに コロンと 音がして みじかくなっていきます。8かい とんだときに ちょうど はんぶんの ながさに なったので とぶのを やめました。ぜんぶで なんかいとぶと なわとびのなわは きえて なくなってしまうでしょう。」(年長35)
この問題に対して、ある親御さんが、
「“なんきょく”って何?と質問されたときに、その説明から子どもが興味を持ちそうです」
「設定がとても面白いと思います」
とコメントされていました。
このように、「正解が出なければ意味がない」と考えるのではなく、お子さんがどんなことに興味・関心をもつだろう?と、親御さんがワクワクしながら、親子の対話を通して「うちの子の、その年齢でしかありえないユニークなアイディアや発想を楽しむ」ことを強くおすすめしたいと思います。
(次回に続く)
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◇〔3〕どんぐり問題への取り組みをサポートする『学習の手引き』(年長さん~5年生)を販売中です。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
◇〔4〕編集後記
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
最近、「ベーシックインカム」が日本でも真剣に議論されはじめているという雑誌の記事を読み、大変良いことだと思いました。
ベーシックインカムとは、全国民に無条件に最低限度の生活費を支給する制度です。例えば月に5万円程度であれば、今すぐにでも実現可能な数字だそうです。(一家4人だと20万円)逆に社会保障(年金・雇用保険・生活保護など)は徐々になくなります。
すぐに制度を移行するのは難しいのですが、「ベーシックインカム」的な方法を、少しずつ導入していくことはできるのです。(例えば、小中学校の給食を無料にするとか)
国民全体が失業時にも不安なく生活できるようになれば、今よりも「失敗を恐れずチャレンジ」する人が増えるのではないでしょうか。また、利益を生むことがなかなか難しい職業(伝統芸能の伝承者など)にも就業希望者が集まるかも知れません。
「所得の再分配」という視点から、真剣に議論してほしいと思います。
年末に向けていろいろと気になることが増えてきました。
今、一番気になっていることは「貧血」です。先日血液検査で、お医者さんから鉄分が足りないことの指摘を受け、それでいろいろと体調不良がおこっていたのか…と納得しました。
これからはレバーも嫌がらずに食べようと思います。
※次号は11月1日(火)に配信予定です。
≪発行/編集≫━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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